「条件が厳しすぎる」
「根掘り葉掘り聞かれて不快」
といったネガティブな意見も多い保護猫の譲渡ですが、猫を虐待したり不当に遺棄する里親詐欺を防ぐためには様々な条件を設けるのは当たり前とも言えます。
とは言え、世間からハードルが高いと思われたまま=保護猫の里親が見つからないという負の連鎖が生まれてしまいます。
そこでこの記事では、猫の里親探しを行なう動物愛護センターから猫を引き取る際の流れや条件について、詳しく解説していきます。
「猫を飼おうか迷っている」
「保護猫の里親になりたい」
という方はぜひご一読ください!
動物愛護センターについて
動物愛護センターとは、厚生労働省が管轄する動物保護施設で、各都道府県や市区町村に置かれています。
主に保健所から移送されてきた動物を一定期間収容し、新しい飼い主を見つけるサポート、またはさっ処分を行なう施設です。
例えば下記のような状況になった際に動物愛護センターへ連絡すると対応してくれます。
「捨て猫・犬を見つけたので引き取ってほしい」
「猫を飼うことが出来なくなった」
また、
「飼い猫・犬が脱走してしまった」
「飼い犬が人を噛んでしまった」
といった不測の事態にも力を貸してくれます。
⇒譲渡の流れまでスキップする
動物愛護センターの主な事業内容
①動物保護事業
・犬猫の引取り
・犬猫の収容、飼育管理
・収容された犬猫の譲渡
・収容された犬猫のさっ処分
・負傷動物の収容、治療
②動物愛護普及事業
・ふれあい教室
・しつけ教室
・譲渡前(後)講習会
③動物取扱対策事業
・ペットショップなどへの立入検査や監視指導
・危険動物を飼育する場所への立入検査や監視指導
④動物由来感染症情報分析体制整備事業
・動物由来感染症に対する調査研究
動物保護事業の一環として、保護活動団体による「地域猫活動(避妊・去勢手術)」「ミルクボランティア(子猫の一時飼育)」の支援も行なわれています。
保健所との違い
保健所は動物愛護センターと混同されやすく、動物のさっ処分を行なう施設というイメージがついています。
しかし実際は、地域住民の健康や衛生をサポートする「人間に関する業務」を行なう施設で、動物に関する業務は動物愛護センターが担当しています。
▸動物愛護センター 動物に関連した特定業務を行なうことに特化した施設
▸保健所 人と地域に関連した業務を行なう施設
※同都道府県内(もしくは市区町村内)にどちらか一方しかない場合、両方の業務を担っているケースもあります
基本的な譲渡の流れ~9ステップ~
~講習会について~
参加費 :無料
所要時間:1時間程度
有効期限:講習修了日から1年間程度
※講習会を受けるタイミングは譲渡前であればいつでもOK
※講習修了後に受講済証がもらえます
譲受は原則先着順なので、希望の猫がいる場合は早めに行動しましょう。
譲渡条件
ここからは最も気になる譲渡条件についてです。
ほとんどのセンターが定めている★★★の条件から、少し珍しい★の条件まで、必須レベル別にご紹介していきます。
必須レベル★★★の条件をクリアできない方は、譲渡の可能性は非常に低くなります。
必須レベル★★★
▸譲渡会やお見合いへ参加
▸終生飼育
▸完全室内飼い
▸定期的な健康診断の受診やワクチンの接種
▸不妊・去勢手術
▸同居家族すべての同意
▸安定した収入がある
▸譲渡後の定期的な報告
※譲渡後の定期報告は、はがき・メール・ブログ・SNSなどセンターによって方法が異なります
必須レベル★★
▸近々妊娠・出産の予定がない
▸転勤や引っ越しの予定がない
▸海外移住の予定がない
▸重大な病気を患っていない
▸ご家族(または本人)が、猫アレルギーを持っていない
▸脱走防止策の徹底(マイクロチップや迷子札の装着など)
▸2段以上のケージを設置
必須レベル★
▸家族全員の面談
▸先住猫がいない場合、2匹飼いをする
▸兄弟がいる猫は一緒に引き取る
▸プレミアムフードで健康管理をする
▸アポイントなしの家庭訪問や連絡などに対応する
▸中学生以下の子供がいる場合、アレルギー検査を実施
▸固定電話がある
▸過去に飼育歴がある
譲渡不可になる可能性が高い対象
▸未成年、学生、無職、フリーターなど経済的に安定した収入がない場合
▸一人暮らし
▸男性の一人暮らし
▸結婚の予定がない同棲カップル
▸小学生未満や乳幼児がいる家庭
▸高齢者
▸高齢者のみの家族
▸日本に永住権および自己所有家屋のない外国籍の方
▸再譲渡、繁殖、販売を目的としている
▸子猫の場合、4時間以上の留守がない
保証人や後見人がいれば譲渡可能になる場合も
<保証人・後見人が必要なケース>
①高齢者(60~75歳以上、センターによって異なる)
②未成年(20歳未満)
③単身者
<保証人・後見人に求められる条件>
①年齢が20~55歳(センターによって異なる)
②飼育者本人の親戚または血縁者
③身元確認(住所、氏名、連絡先、身分証等)
④一緒に譲渡会やお見合いへ同行するなど、面会が必要
※その他、ペット可住居などの証明書を提出する必要がある
譲渡にかかる費用
動物愛護センターから引き取る場合、基本的に費用はかかりません。
ただし、センターによって数千円程度の手続き費用や、保護~譲渡までにかかった医療費についての負担が必要な場合もあります。
医療費の内訳と費用目安
▸不妊手術の術前検査費用(血液検査・レントゲン・エコー)
費用目安:3,000円
▸避妊去勢手術代
費用目安:メス10,000円~15,000円、オス5,000円~10,000円
多頭飼育崩壊の猫や耳カット済みの地域猫、センター指定の動物病院で手術をした場合など、手術費用が0円になることもあります。
▸ウイルス検査費用(猫エイズ・猫白血病)
費用目安:3,000円~5,000円
▸寄生虫駆除代(ノミ・ダニ・回虫等)
費用目安:2,000円~5,000円
▸3種混合ワクチン費用(子猫の場合は×2回分)
費用目安:3,000円~5,000円
▸マイクロチップ挿入費
費用目安:3,000円~5,000円
▸マイクロチップ登録料 1,050円
6ヶ月未満の子猫は、エイズや白血病の検査をしても正確な判定ができないため、体への負担を考えて実施しないのが基本です。
そのため、子猫を引き取る場合は少なからずリスクがあるということを知っておきましょう。
その他の費用
▸飼育費(餌代、トイレシーツ代など)
▸事務手数料
費用は全額負担、一部負担とセンターによって異なります。
また、施した医療行為の種類に関わらず一定の金額を請求する場合や、あらかじめ費用上限が決まっているケースもあります。
例)医療費35,000円+その他費用10,000円の場合
▸全額負担⇒支払額45,000円
▸一部負担⇒
①上限なし4割負担⇒支払額18,000円
②上限10,000円⇒支払額10,000円
▸一律請求50,000円⇒支払額50,000円
譲渡時に提出する書類
<基本的に必要な書類>
▸身分証明書のコピー(免許証、保険証、住民票など)
▸集合住宅または賃貸住宅に住んでいる場合
⇒ペット可住居を証明する書類(管理会社や大家からの飼育許可書、承諾書、または規約書のペット可条項のコピーなど)
収入を証明するために、下記が必要になるケースもあります。
▸収入証明書、会社記入捺印のある在職証明書、源泉徴収票、預金残高が分かる通帳のコピーなど
※電話確認が行なわれる可能性もあります。
その他、必要に応じて下記書類の提出を求められます。
▸家族内にアレルギーの方がいる場合
⇒医師の診断書
▸避妊・去勢手術、ワクチン接種を自分で行った場合
⇒領収証・証明書のコピー
トライアルについて
正式譲渡前のお試し期間として、トライアル制度を設けているセンターが増えてきました。
このトライアル期間は、猫を引き取るかどうかを考えるとともに、センターが譲渡するか否かを見極める期間でもあります。
トライアルは基本1~2週間程度で、猫の飼育に必要な準備は一通り済ませておく必要があります。
また、トライアル中にかかった医療費は自己負担となり、正式譲渡に至らなかった場合でも基本的に返金されることはありません。
~6ヶ月未満の子猫は体調が変化しやすく、いつ急を要する処置が必要になるか分からない不安定な存在です。
また、著しく成長する時期でもあり、例え1週間程度であってもあっという間に大きくなるため、トライアルは行わないことがほとんどです。
先住猫(犬)がいる場合の注意点
先住猫(犬)がいる場合は、飼育頭数に注意。
多くの場合、3頭以上の同時飼育は譲渡不可になります。
また、下記条件をクリアしている必要もあります。
▸先住猫の避妊・去勢手術が済んでいる(病気や高齢といった特別な事情を除く)
▸先住猫のワクチン接種が済んでいる
▸先住猫が疾患を持っていない(お互いの血液検査が必要な場合もあります)
▸先住猫が必ず室内飼いであること
まとめ
以上、動物愛護センターから猫の譲渡を受けるときの基本の流れを解説しました。
動物愛護センターはマイナスイメージが強い施設ですが、実際はさっ処分ゼロを目指して様々な活動が行なわれており、里親募集に対しても非常に積極的です。
また、保護活動団体や保護猫カフェよりも譲渡条件のハードルが低く、譲渡費用も無料の場合が多いというメリットもあります。
猫を飼おうか考えている方は、動物愛護センターからの引き取りを検討してみてはいかがでしょうか。
興味がある方は、各センターの公式サイトを覗いてみてくださいね。